地歌箏曲歌詞一覧

〜地歌箏曲の歌詞をテキストデータにしました。歌わない尺八家だからこそ、歌詞を意識したいです。〜

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か行

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楓の花 松坂春栄作曲、尾崎宍六作詞

花の名残りも嵐山、梢こずえの浅緑、松吹く風にはらはらと、散る葉楓の花ならん、井堰(いせき)を登る若鮎の、さばしる水のみごもりに、鳴くや河鹿(かじか)の声すめる、大堰(おおい)の岸ぞなつかしき、川上遠くほととぎす、しのぶ初音に憧れて、舟さし登し見に行かん、戸奈瀬(となせ)の奥の岩つつじ

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楫枕  菊岡検校作曲、 橘遅日庵(岐山)作詞

空櫓(からろ)押す、水の煙の一方(ひとかた)に、なびきもやらぬ川竹の、浮き節しげき、しげき浮き寝の泊まり舟、寄る寄る身にぞ思ひ知る、波か涙を苫(とま)洩る露か、濡れにぞ濡れし我が袖を、しぼる思ひを押し包み、流れ渡りに浮かれて暮らす、心づくしの楫枕、さして行方の遠くとも、遂にや寄る辺は岸の上の、松の根かたき契りをば、せめて頼まん頼むは君に、心ゆるして君が手に、繋ぎ止めてや、千代万代も

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桂男  菊岡検校作曲、五代目三井次郎右衛門高英(後楽園四明居)作詞

思ふことあればこそ、ねぬ初雁の夜渡る声も寒からで、空に立つなや久方の、月にや影を乱すらん、露しんしんとして、まくづに虫の裏ねさへ、ただ松虫の訪れも、尾花が秋をまねくやら、誘はば超えん関も憂し、そらねやつとう夜半のくだかけ

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巌上の松  菊塚与一作曲、藤村叡運僧正作詞

君が代の、例(ため)しにのみは引かれても、根ざし動かぬ岩の上の、松は云はでも千代八千代、変わらぬ色に栄ゆらん、その松が枝のふり見れば、迎へる年の名におへる、龍の姿に似たるかな、あら面白の松が枝や、 あら面白の松が枝や

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銀世界  菊原琴治作曲、市田瓢々作詞

同じ色重ねかさねて白砂の、げに麗はしや飛石に、草履の跡も面白く、そと打ち払ふ数寄屋笠、待ちに待たるる鐘の音の静かに響く四畳半、寒さ忘るる炭手前、積もる話も打ちとけて、茶呑みの友の冬ごもり、豊かにもるる釜の煮へ、開く小窓や庭先の眺め尽きせぬ銀世界

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黒髪  初世湖出市十郎作曲

黒髪のむすぼれたる思ひをば、とけて寝た夜の枕こそ、ひとり寝る夜はあだ枕、袖は片敷く妻ぢゃといふて、愚痴な女子の心は知らず、しんとふけ行く鐘の声、ゆふべの夢の今朝さめて、ゆかしなつかしやるせなや、積もると知らでつもる白雪

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けしの花  菊岡検校作曲、五代目三井次郎右衛門高英(後楽園四明居)作詞

手にとりて、見ればうるはし芥子の花、絞りしぼればただならぬ、匂ひ香ばし花びらの、散りにし姿あはれさよ、悋気(りんき)する気も夏の花、雨には脆(もろ)き風情あり、誰に気兼ねをなんにも言はず、ぢつとしている奈良人形

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小督の曲  山田検校作曲、作詞者不詳(横田袋翁か)

牡鹿鳴く、この山里と詠じけむ、嵯峨のあたりの秋の頃、千種の花もさまざまに、虫の恨みも深き夜の、月に松虫招くは尾花、萩には露の玉虫や、そよぐおぎ虫轡(くつわ)虫、鳴く音につれて仲国が、寮の御馬賜りて、宿直(とのい)姿の藤袴、尋ぬる人の面影に、立つ薄霧の女郎花、それかあらぬか幻の、蓬が島根尋ね侘び、駒ひき止むる笹の隈(くま)
休らふ蔭の松風に、通ふ、通ふ爪音妻恋ひの、音に寄る鹿にあらねども、昔覚ゆる笛竹や、合はす調べの紛(まが)ひなき、声を知るべに慕ひ寄る、嵯峨野の奥の片折戸
想夫恋(そうふれん)の唱歌(しょうが)は、比翼の翅(つばさ)の雲居を恋ひ、盤渉(ばんしき)調の調べは、松の連理の枝に通ふ、小督の局世を忍ぶ、住処(すみか)も明日は大原に、変へん姿の名残とて、夜半に手ならす爪琴の、岩越す思ひ堰(せ)きかねて、涙に袖を柏葉(かしわば)や、人目も如何(いかが)菖蒲形(あやめがた)
糸の色香を知るべにて、差し入る月の雲居より、御使に参りしと、畏(かしこ)き君が勅(みことのり)、野辺の遠方(おちかた)分け来つる、露の玉章さし寄する、妻戸の端の縁の綱、また引き結ぶ御返り言(ごと)、添へて賜る五つ衣、後朝(きぬぎぬ)贈るほどもなく、迎ひの車奉り、昔に返る百敷(ももしき)や、 昔に返る百敷や、千代を契りの松の言の葉

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小簾の戸  峰崎勾当作曲

萍(うきくさ)は、思案のほかの誘ふ水、恋が浮き世か、浮き世が恋か、ちょっと聞きたい松の風
問へど答へも山時鳥(やまほととぎす)、月やはもののやるせなき、
癪(しゃく)に嬉しき男の力、じっと手に手を何にも言ばず、二人して釣る蚊帳(かや)の紐

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五段砧(三段獅子より)  光崎検校作曲

花は吉野よ 紅葉は高雄、松は唐崎 霞は富山、いつも常磐のふりは、さんざしほらしや、とにかくに思はるる

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寿競べ  二世山木検校作曲、作詞者不詳

寿(じゅ)は峻山(しゅんざん)にして千歳(せんざい)秀で、また蒼海(そうかい)の限りなき、南の星の影ひたす
岩根の波の名に高き、天橋立ふみも見ず、水の江といふ雅男(みやびお)あり、月雪花の折々に、都の手振り疎からず、心も軽き春風に、釣竿とって青柳の、糸くり出す一葉(ひとは)舟、かつを釣り鯛釣り誇り、七日まで、家路忘れて住の江や、浦廻(うらわ)遥かに漕ぎ出でぬ
ああいぶかしや、正しく釣りしは亀なるを、いとやんごとなき上臈(じょうろう)の、折ればこぼるる笑みの露、初花桜に鶯の、初音添へたるばかりなり、我はそも龍(たつ)の都の者なるが、君を伴ひ申さむ、いざ諸共にと浦島は、常世(とこよ)の国に到りけり
わだつみの、わだつみの、神の宮居(みやい)の内のべの、妙なる内にいつまでも、思ひ渚にうち連れて、貝や拾はむ、 玉や拾はむ
君が縁(えにし)は紫の、深き色貝千種貝、たまの逢瀬は七曲(ななわだ)に、思ひ通した女気は、風に乱れぬ玉簾、すだれ貝との隔ては憂しと、くねる目元の潮貝は、撫子貝のしどけなく、物思ふとは白玉か、何ぞと露のあだ言葉、つい口玉にかけられて、手枕(たまくら)触れし朝寝髪、楽しき中に故郷を、かつ偲ばれて立ち帰り、乙女が与へし玉匣(たまくしげ)、開けてのどけき如月の、花の筵(むしろ)に団居(まとゐ)して、寿くらべ千代くらべ、山に比べて此の君の、高き齢を祝しけり

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こんかい  岸野次郎三作曲、多門庄左衛門作詞

痛はしや母上は、花の粧ひ引きかへて、萎るる露の床の内、知恵の鏡もかき曇る、法師にまみえ給ひつつ、母を招けば後見返りて、さらばといはぬばかりにて、泣くより外のことぞなき、野越え山越え里打ち過ぎて、来るは誰ゆゑそさまゆゑ、誰ゆゑ来るは、来るは誰ゆゑそさま故 君恋し、寝ても覚めてもな忘られぬ、我が思ひ、我が思ひ、それをも見れば、春の花散りて秋の紅葉も色づく、世の中は電光石火夢のうち、捨てて願ひをさ、捨てて願ひをさ、南無阿弥陀仏、なむあみだ
君は帰るか恨めしや、いのうやれ、わが住む森に帰らん、勇みに勇みて帰らん、わが思ふ、心の内は白菊、岩隠れ蔦隠れ、篠の細道かき分け行けば、虫の声々面白や、降りそむる、やれ降りそむる、やれ降りそむる、今朝だにも今朝だにも、処は跡もなかりけり、西は田の畦危ないさ、谷峰しどろに越え行けば、あの山越えて、こがれ焦がるる憂き思ひ

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金剛石  楯山登作曲、昭憲皇太后御歌

金剛石も磨かずば、珠(たま)の光はそばざらん、人もまなびてのちにこそ、まことの徳は現はるれ
時計の針の絶へまなく、めぐるが如く時のまの、ひかげ惜しみて励みなば、いかなる業(わざ)か成らざらん

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